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2006-02-07 (Tue) [長年日記]

#1 JASRACに著作権を預けた曲でも、作者が「不快」なら自由に差し止められる?

簡単にまとめると、あるレーベルが、所属するバンドの曲の著作権をJASRACに預けている。その曲をテレビ局が番組に使った。しかし事前に挨拶がなかったのが気に入らない。作った自分たちには著作者人格権があるから、「自分たちが不快なら利用をやめさせる権利がある」という主張をしている、とのことだ。

「JASRACとの取り決めに従って曲を使っただけ」という番組サイドの主張は、バンドがそのことを不快に感じている以上、認められません。バンドの活動方針に対してまで、多くの人の誤解を招く結果になってしまったんですから。ちょっと話はずれるけど、今現在バンドからの許諾を直接得ることなく、JASRACとの取り決め「だけ」に従って着メロ、カラオケを制作販売している業者の方々にも同じことが言えます。このことに対してもPIZZA OF DEATH の多くのバンドは不快に感じています。百歩譲って、今まではしょうがないとしても、バンドが不快に感じていると分かったからには今後どうするべきか分かりますよね?

この主張を読んで不思議なのは、だったらなぜ曲の著作権をJASRACに預けているのか?ということだし、

JASRACは原則として、皆さまから全ての著作権をお預かりして管理しますが、JASRACにお預けいただく範囲の中から一部の権利を除くという選択も可能です。

預けるとしても、「放送とカラオケは除く」みたいな契約をしておかないで、カラオケに使われたり放送で流されてから「不快なのでやめろ」とか言っているのかということだ。

また、このレーベルが「たとえJASRACと契約しても"不快だから"ストップできる」と水戸黄門の印籠のように考えているらしい「著作者人格権」だけど、

によると、

  • 公表権
  • 氏名表示権
  • 同一性保持権

があるとされているほか、「著作者の名誉・声望を害するような著作物の利用」はダメだということになっている。

ここでいう「公表権」とは、まだ未公開のものに対してだろうし、氏名表示権についてはよく分からないけど、信託するときに決めておくんじゃないだろうか。同一性保持権は、今回の場合は替え歌とかじゃないので関係ない。また、普通に番組の中で使うくらいなら「名誉を害する」ともならないだろう。

というわけで、今回のは著作者人格権で差し止め可能なケースではないだろうというのが私の結論だ。

まあ普通に考えて、

「楽曲使用料をJASRACに支払いさえすればバンド(著作者)に直接許諾を得ることなく放送で曲を使用できる」という、日本民間放送連盟(民放連)とJASRACとの間での取り決め

というのがある以上、JASRACに「放送可」で著作権を預けていたはずの作者側の言い分が通るとは思えないし、自サイト上で「百歩譲って、今まではしょうがないとしても、バンドが不快に感じていると分かったからには今後どうするべきか分かりますよね?」なんて傲慢かましている暇があったらJASRACと契約の区分を見直したほうがいいと思う。

追記

はてなブックマークでこのような指摘があった。

akkun_choi 『[copyright][music]"著作者の名誉・声望を害するような行為"にあたるのでは?http://www.jasrac.or.jp/profile/copyright/person.htmlによれば"例えば自分の意に沿わない商品のCMに勝手に音楽が利用されるようなケース"も著作者人格権にあたるとある』

また、コメント欄でのモーリさんによる指摘では、

わたしたちの著作権講座: 著作者人格権
http://neo-luna.cside.ne.jp/copyright/ncr13.htm

「著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格意的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的声望名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まれないと解するべきである」(前出「パロディーモンタージュ事件」第2次上告審―昭和61年 5月30日,最高裁第2小法廷判決)

という解釈があるらしいです。

つまり、TBS系ドラマ「ガチバカ!」に使用されたことによって、バンドが「社会から受ける客観的な評価」が損なわれており、決して「主観的な名誉感情」ではない、ということが言えればいいんじゃないでしょうか。

で、この判例をもとに判断すると、今回の件ってどうみても「主観的な名誉感情」ですよね…。

上記の例と下記の例は正反対のことを言っているようにも読めますが、上記はJASRACのサイト内の記述であくまでも「JASRACの見解」であるのに対し、下記の例は判例なので、私としては下記の方針で実際に運用されていると考えます。

さらにダメ押し

Q2. 盗作防止のために、JASRACに楽曲登録したいのですが?
また、勝手に利用されないために、JASRACに楽曲登録できますか?

A2. JASRACは「権利を擁護する」とともに、「利用の円滑を図る」ことを目的としております。よって、適法な手続きを経た利用者に対しては、基本的に、利用をお断りしません。これらの点をご理解のうえお申込みください。

(A2は抜粋、一部太字化はyucoによる)

要するにFAQ嫁という話だったか。

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今日のメモ powered by MM

本日のツッコミ(全23件) [ツッコミを読む]
# aitea (2006-02-07 (Tue) 14:59)

アド街ック天国とか、お店毎にBGM変えてますけど、あの曲全てのバンド、作曲者に、このお店、このランキングの紹介で使ってよろしいですか、まさかテレビに使っちゃいけないってお考えだったりしませんよね? って尋ねなきゃいけないと面倒でしょうねえ

# yuco (2006-02-07 (Tue) 15:06)

そうですねえ。著作物って、ゼロから作るだけじゃなくて、既存の著作物を組み合わせて作ることもあるはずで、そういうときに作りやすくするという視点も持ってほしいし、どうしても使われ方を一つ一つコントロールしたい、というならJASRACに預けずにそれにふさわしい方法を取ればいいのに、と思います。

# yuco (2006-02-07 (Tue) 15:20)

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.pizzaofdeath.com/news/info.html<br><br>めも

# yuco (2006-02-07 (Tue) 17:05)

ジャスラックに曲を預けていることを知らずに怒っている人がたくさんいるし、知っている人でもジャスラックが悪い的な表現。<br>アーティスト側も「著作権を預けている」ということをわかっておらず一方的に被害者面しているけど。<br><br>http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=4019240&comm_id=22465&page=all<br>http://www3.vc-net.ne.jp/~etsu/hw6/

# otsune (2006-02-07 (Tue) 18:16)

「アーティストの神聖な作品を汚す行為」というスピリチュアルな要素を除いた議論が読みたいところ。<br><br>でもそこを除いたら、このミュージシャン側が苦言を主張できる根拠がゼロにちゃっちゃうか。

# walrus (2006-02-07 (Tue) 18:32)

JASDACが出している著作権信託契約約款を見ても、放送、有線放送の支分権を設けない限り、放送、貸与、頒布権の期限付きの譲渡ですよね。そんな主張が通る「譲渡」って成立しなそうな気がしますけど...。<br>http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/1.pdf

# ゆきち (2006-02-07 (Tue) 20:15)

つまり、小沢健二は勝ち組、と(違

# hyuki (2006-02-07 (Tue) 23:23)

「使われ方をコントロールしたがるアーティスト」と思われると、今後使われる可能性は減るでしょうね。あ、それがこのアーティストの望むことなのか…。<br>自分の作ったものだから強くコントロールしたいと思えば思うほど、幅の狭い使われ方しかされない。つまりは、作品がアーティストの枠の中で閉じてしまいますね。まあそれもバランスなんでしょうけれど。

# がは (2006-02-08 (Wed) 00:44)

JASRACに支払いさえすればどんなお下劣なのにも使っていいんだ!バンザーイ!! ★\( ̄▽ ̄ )/クル\(   )/クル\(  ̄▽ ̄)/★バンザーイ!!

# がは (2006-02-08 (Wed) 00:46)

AVにあんなこの歌やこんな子の歌を是非使って欲しいものだw

# otsune (2006-02-08 (Wed) 02:21)

がはさん。<br>その事例は<br>>「著作者の名誉・声望を害するような著作物の利用」はダメだということになっている。<br>に当たると思います。

# モーリ (2006-02-08 (Wed) 04:50)

PoD 側の論理の根拠は、著作権法第百十三条(侵害とみなす行為)の第6項「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。」にあるんですよね、きっと。<br>http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html#7<br><br>で、この条文に関しては<br><br>わたしたちの著作権講座: 著作者人格権<br>http://neo-luna.cside.ne.jp/copyright/ncr13.htm <br>>><br>「著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格意的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的声望名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まれないと解するべきである」(前出「パロディーモンタージュ事件」第2次上告審―昭和61年 5月30日,最高裁第2小法廷判決) <br><<<br><br>という解釈があるらしいです。<br><br>つまり、TBS系ドラマ「ガチバカ!」に使用されたことによって、バンドが「社会から受ける客観的な評価」が損なわれており、決して「主観的な名誉感情」ではない、ということが言えればいいんじゃないでしょうか。<br><br>でも、http://www.pizzaofdeath.com/news/info.html にある<br>>><br>もうひとつは「著作者人格権」。これもその名の通り、著作者の人格が損なわれるのを防ぐ権利。簡単に言えば、著作者の気持ちを無視してその人の作品を使っちゃだめですよ、ということです。<br><<<br>というのはちょっと「簡単に言」いすぎじゃないかと思いますが。

# とぴっくん (2006-02-08 (Wed) 06:21)

楽曲使用料をJASRACに支払いさえすればバンド(著作者)に直接許諾を得ることなく放送で曲を使用できる」という、日本民間放送連盟(民放連)とJASRACとの間での取り決め <br><br>これはあくまで、代行をJASRACに依頼してるだけで、放映権をJASRACに譲渡してるわけではないのであるから。<br>主権者が差し止めを提示すればJASRACは従わないわけにはいくまい。

# shiranui (2006-02-08 (Wed) 07:15)

とぴっくんさん、<br>JASRACとの信託契約により、放送に関する著作権はJASRACに移転されています。JASRACは代理人ではなく、著作権者です。

# ゆきち (2006-02-08 (Wed) 11:04)

結城さんのコメントなのですが、結城さんは、この件に肯定的なのでしょうか、否定的なのでしょうか。<br><br>確かに、社会的常識や契約という範疇から考えると、彼らの行動はわがままに写ることでしょう。でも、相手は創作業です。わがままなのが、当たり前です。自分が解き放った我が子が自分の力の及ばないところで不快な目にあっているところを見て黙っているわけがないでしょう。松本零士が著作権の更に保護期間を長くしたいと訴えたり、浦沢直樹の作品が雁屋哲氏によって絶版にさせられている件もありますしね。これらにしたところで、普通に見ればわがままかもしれませんが、創作家のエゴを理解しないまま批判しても意味がありません。大体、わがままでないアーティストなんていて欲しくない。この件については、契約上の問題に収束するでしょうが、快不快の表明くらいできないアーティストなんて、信用できません。社会的常識に黙々と従いつづけるアーティストなんて屑です。<br><br>上で小沢健二を上げたのは、冗談でも何でもありません。小沢健二はフリッパーズ時代のものを含め、JASRACには無信託です(JASRACのデータベースを参照してください)。つまり、アーティストのエゴで楽曲をコントロールする権利を契約上も確保しています。

# nogajun (2006-02-08 (Wed) 17:36)

ゆきちさんへ。<br><br>>上で小沢健二を上げたのは、冗談でも何でもありません。小沢健二は<br>>フリッパーズ時代のものを含め、JASRACには無信託です<br><br>えーっと。ポップミュージックのだいたいの場合アーティスト自らJASRACに信託すると手間がかかるので音楽出版社に楽曲を預けて管理を依託します。<br>ですので小沢氏、フリッパーズギター共に楽曲管理を委託されている各音楽出版社名義でJASRACに信託されています。<br>社団法人音楽出版社協会のサイトに「著作権料の流れ」があるので参考になると思います。<br>http://www.mpaj.or.jp/whats/flow/index.html

# ゆきち (2006-02-08 (Wed) 19:15)

> nogajunさん<br>うー、そうなのですか、うかつでした。<br>データベースで言うところの<br>> 出版者  JASRAC ドアノック・ミュージック<br>なのですね。でも、CDにJASRACマークを見なかった気が。

# yuco (2006-02-08 (Wed) 21:26)

疑問なんですが、ミュージシャンはJASRACと契約しないと、具体的にどういうデメリットがあるんでしょうか。他の著作権管理団体というのであれば、たとえばe-Licenseというのがあります。<br><br>参加アーティスト一覧はこちら<br>https://ssl.elicense.co.jp/piece/retrieval/2.php?login=<br>知らない名前が多いですが、時々知っているミュージシャンの名前も出てきます。たとえば大槻ケンヂはここに3曲登録しています。

# yuco (2006-02-08 (Wed) 21:40)

あーちょっとわかった。<br><br>http://www.elicense.co.jp/qa/01.php#new3<br>>><br>ラジオやテレビで楽曲が利用された場合の著作権使用料を回収する為には、著作権の権利区分(支分権)の中の、「放送権」と呼ばれる権利をJASRACへ登録する必要があります。<br><<<br><br>JASRACと契約しないとそもそも放送された場合の著作権料の回収ができないわけね。<br><br>http://img.yahoo.co.jp/i/evt/magazine/news/08.pdf<br>また、週刊ダイヤモンドのJASRAC記事によると、お店で演奏された場合の著作権料の徴収も全国にネットワークのあるJASRACでないと難しいらしい。<br><br>しかし、この著作権料の分配は演歌に偏っていてポップスなどに対しては微々たるものだという話もあるし、インディーズならなおさらだろう。だとしたら、放送と演奏による著作権料の徴収はあきらめて(逆に放送・演奏は誰でも自由にして良いことにして宣伝にしたりとか)、CDとライブだけで稼いで、JASRACとは契約しないという方法はありなんじゃないかなあ、と思うんだけど。

# hyuki (2006-02-08 (Wed) 21:55)

ゆきちさんへ、<br>http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20060208#jasrac<br>でお返事いたしました。

# shidho (2006-02-09 (Thu) 10:53)

はじめまして。<br>>JASRACと契約しないとそもそも放送された場合の著作権料の回収ができない<br><br>そういう言い方もありますが、もちろん放送局と個別に契約すれば<br>著作権料の回収は可能なので正確ではありません。<br><br>むしろ、そういう個別契約が必要となると面倒なので、<br>逆にJASRACに信託されていない曲は放送局が使いたがらない、ということは言えます。<br>冬のソナタの主題歌が一時期ワイドショーやコントでやたらと使われたのですが、<br>ある時期から全く流れなくなったのはそれです。<br>(実はJASRAC委託されていないことがわかったので、使用を注意するよう連絡が回りました。もちろん契約すれば使えるのですが、使用料は別途必要だし、契約している暇はないしで皆使用を控えたのです。)<br><br>>CDとライブだけで稼いで、JASRACとは契約しない<br>確かに、そういう演奏家もいますよ。<br>その人の場合、テレビ放送は生演奏がほとんどなので、<br>その際の使用料はとらないことでプロモーションに利用しています。

# otsune (2006-02-10 (Fri) 01:26)

>逆にJASRACに信託されていない曲は放送局が使いたがらない、ということは言えます。 <br><br>ナムコのゲーム音楽を作っている人から聴いた話ですが、JASRACに登録していないゲームミュージックのCDは番組で勝手に使われまくっているそうです。<br><br>また<br>>><br>「楽曲使用料をJASRACに支払いさえすればバンド(著作者)に直接許諾を得ることなく放送で曲を使用できる」という、日本民間放送連盟(民放連)とJASRACとの間での取り決め<br><<<br>は、単純に曲をそのまま音楽として独立したものとして放送するときの取り決めであって、CM・劇場・ビデオの映画作品の挿入歌として流す場合には、JASRACは著作者の許諾をとるように促しています。<br><br>また著作隣接権のチェックの部分はJASRACは関与しないので、アーティスト側がやってください。という契約にもなっています。<br><br>簡単に言うと「TV番組やTVドラマで局が使われるときに著作者の許諾をとるべきかどうか」をJASRACは定義していないから曖昧ってことですね。

# shidho (2006-02-10 (Fri) 15:47)

>JASRACに登録していないゲームミュージックのCDは番組で勝手に使われまくっている<br><br>でしょうね。<br>前に書いた「冬のソナタ」も、権利者からの指摘(つうか抗議)が<br>あって初めて判明(つうか対策)したことですから。<br>抗議がないとJASRACマークがないことに気がつかない人も<br>まだまだ多いと思います。(ひところよりは浸透しているらしいです)<br><br>あと、細かい話ですが、CMや劇場、ビデオは<br>放送とは管理区分が別になってるですね。<br>そのうちCMについてはJASRAC基準としていない原著作者も多いです。<br>これはJASRAC的には個別交渉、とはっきり言ってる状態です。

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# Copy & Copyright Diary:[音楽][JASRAC]JASRACの存在意義 (2006-02-08 (Wed) 00:03)

ビリリアントグリーン:続・ガチバカ - livedoor Blog(ブログ) http://blog.livedoor.jp/billie_green/archives/50207098.html こちらのエントリを見て、この件を知った。 お知らせ。 http://www.pizzaofdeath.com/news/info.html PIZZA OF DEATH RECORDSというレーベル..

# 結城浩のはてな日記:すべてトレードオフ (2006-02-08 (Wed) 13:33)

JASRACに著作権を預けた曲でも、作者が「不快」なら自由に差し止められる?というyucoさんの記事のコメントに、結城は以下のように書き込みをしました。 hyuki (2006-02-07 (Tue) 23:23) 「使われ方をコントロールしたがるアーティスト」と思われると、今後使われる可能性..

# @ parallel minds:想定外のつかわれ方 (2006-02-09 (Thu) 10:52)

すべてトレードオフ:結城浩のはてな日記 「著作権者が作品の利用のされ方を限定す...






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