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2004-06-19 (Sat) [長年日記]

#1 小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)

Amazonの書評では「読みやすい」と言われているが、私にとっては大変だった。2回くらい読んで一通り理解はしたと思うが、自分の中で消化しきれていない部分が残る。

それは、「歴史学とはなにか」という、安易に決定できないような問題を追求しているからで、ある意味仕方がない。本書中では歴史学のやりかたは「疑い、ためらい、行ったり来たりする」ことだと言っており、本書もそのような書き方がされている。

それでも、著者ができるだけ読みやすい文章にしようとしていることはわかる。私は読んでいないから知らないが、「こういう問題を語っている類書と比べて読みやすい」ということは十分あるだろう。


歴史学というものを、単純に「各種資料を使って、昔のことを明らかにすること」とだけ考えていてはダメらしい。それは、構造主義*1の考え方を導入して「認識なんて全部相対的なもの」と考えてしまうと、歴史もまた「資料の記録者や解読する歴史学者の認識によって変わってしまい、過去のできごとに対する正しい認識などない」となってしまうからだ。こうなると、歴史学の意義が問われる。

そこで著者は「コミュニケーショナルに正しい認識」という考え方を提案する。これは、私たちが無意識のうちに日常生活でしているような「話し合いによって、厳密ではなくても妥当な結論を出し、あとで間違いが分かったときには訂正する余地を残しておく」という感じだ。

なお、構造主義については、本書で「おすすめの啓蒙書」として『寝ながら学べる構造主義』を紹介しており、構造主義の定義として私も引用したところなどを使っている。が、本書は構造主義の本ではないので、そんなに念入りに説明しているわけではない。ある程度の予備知識を持たずに読むと「どうしてこんなに丁寧に構造主義に反論しないといけないのだろう?」と思ってしまいそうだ。


そのほか、本書では以下のような各種の紹介がなされている。

  • 歴史に対するいろいろな解釈の枠組みの例や、それらの歴史的変遷
  • 新書レベルの歴史学のおすすめ書籍(本書のような「『歴史学』学」ではなく、実際に過去の出来事を調べて紹介したもの)
  • 一見無味乾燥に思える高校の教科書に、どのように最近の歴史学の議論が盛り込まれているか

*1 本書で初めて知ったが「構造主義」=「ニュー・アカデミズム」なんですね…

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