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2004-06-15 (Tue) [長年日記]

#1 内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)

構造主義の入門書。取り上げているのは、構造主義前史としてマルクス、フロイト、ニーチェ、構造主義者としてはソシュール、フーコー、 バルト、レヴィ・ストロース、ラカン。

あちこちで評判が良かったのを見たので買ったが、たとえをふんだんに使っていたりして確かに読みやすい。私のように、上に挙げた構造主義者たちの名前は聞いたことある*1けど、考え方についてはよく知らないという人が入門するのにはぴったりだろう。

構造主義とは、この本によると以下のような考え方のこと。

私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。だから、私たちは自分が思っているほど、自由に、あるいは主体的にものを見ているわけではない。

お勉強本として『ヨーロッパ思想入門』の次に読むとちょうど良いと思う。『ヨーロッパ思想入門』は、本書中では構造主義者が論破したとされている実存主義のところでほとんど終わりだからだ。じつは私は本書を先に読んだのだけど、きのう『ヨーロッパ思想入門』の感想として書いた、

著者が日本人なのに、本書中のヨーロッパは「ヨーロッパの中にいる人にとってのヨーロッパ」であり、「世界の中のヨーロッパ」や「アジア人の見たヨーロッパ」ではないのだ。

というのは、構造主義の考え方に影響されたと言えるだろう。

あとは個人的感想を箇条書き。

  • 小谷野敦『バカのための読書術』ISBN:448005880X で、井上章一の仕事が「フーコーのテーマ」と言われていた理由が分かった。そういう意味では『〈民主〉と〈愛国〉』ISBN:4788508192 もそうだ。つまり、ある言葉の使われ方は昔から同じだったのではない。かつては、その言葉をいまとは全く違う文化圏の人が、違うやり方で使っていた、というようなこと。
  • (p.144) サルトル=カミュ論争というのがあったらしいが、サルトル一人が論争に負けるのと実存主義全体が負けるのは別物ではないのか?いくらサルトルが実存主義の中で大物であっても、である。
  • (p.177) 精神分析を受けて「両親に性的虐待を受けた」という記憶がよみがえり、親を訴えた子どもの話。精神科医としては、たとえよみがえったのが偽りの記憶でも、患者が直ればいいというのはわかるが、こういう「個人によって真実が違う」という構造主義の考え方を、一つの答えを出さないといけない裁判所に持ち込んだときには、一体どうすればよいのか。いま読みかけの、小田中直樹『歴史学ってなんだ?』ISBN:4569632696 に出てくる従軍慰安婦問題もそうなんだけど。

*1 おもに、はてな中心にあちこちのweb日記で。

Tags: Book | Bookmark:

#2 政治家のメディア利用

※落ち/結論はないです。つらつら書きます。

きのうの中日新聞夕刊に、北朝鮮の拉致家族会と小泉首相との会見についての記事があった。

もともと会見中にテレビカメラは入らない予定だったが、直前になって会見中の内容もテレビに放映することに変更した。放映の結果、家族会への批判が殺到した、という内容だった。

私は上記関連のテレビは一切見ていないのだが、家族会の発表をテレビで見た方の感想。(2004/06/19追記)

テレビでは横田氏の否定的な言葉だけが繰り返し流された。曰く、「予想していた一番悪い結果」「裏切られた気持ち」。前後にはとりあえず帰還できた家族を祝い、首相を評価する言葉もあったのだが、テレビが欲しいのはそこではなかった。

小泉首相は日本の政治家としてはメディア対策に力を入れていることで知られている。名前忘れたけど、メディアに明るい腹心の部下がいるはず。メルマガなんかもかなり成功したと言えるのだろう。私も一時期読んでた。


部室での人質事件コラムとそれをめぐる議論で分かったのは、国をコミュニティの延長として見る、という考え方があるということ。

国や政府は大きな社会とその管理人なんだよ。だから国民や政府が、人質たちが責任を果たしたか気にするのは当然だ。

ぼくにとって、国はコミュニティの延長ですし、政府というのはそれを運営する企業とそんなに遠い存在ではありません。しょせんお役人といえどサラリーマンにすぎないんです。

自分の思い通りにならないところとかを見ると、潜在的な権力があると言いたい気持ちにはなるのは自然なことだと思います。そしてそれもまた、現実ではあるのです。国民のほとんども、そういう印象を実感として持っていると思います。国を拡大コミュニティとして捉えるのが一般国民の通例かといえばそうではないと思う。

法律や政治学の世界では、国というものは大きな権力を持っているので、その力の乱用を防ぐとか、国はいかにして国民を助けないといけないか、という話をしている。ここでは、国はみんなからお金を集めて運営しているコミュニティだとか、官僚や政治家も国民のひとりだという考え方はとりあえず抜きで話が組み立てられている。

私は、これは国というものの解釈の問題であって、別にどちらが正しいというものでもないと思う。

政治に関するメディア活用は、いまのところ、「国といっても普通の人が動かしている、ひとつのコミュニティや保険会社のようなものだ」という解釈を国民にさせる方向で進んでいると感じる。


Wikiばな飲みで話していた内容で、結城さんが「その人の個性とウェブの特性、各種法律をふまえてウェブ上で日記なりを書いて表現してくれるエージェントがいたらいい」*1というような話をされていたので、私は「それって政治家についてるイメージコンサルタントのweb版じゃないですか。あるいは広告代理店の仕事かもしれませんね」と言った。

政治家blogサービスが始まった。

ちょっと見にくい。何よりまず、政治家blog一覧へのリンク集が欲しいところ。どこかにあるのかもしれないが、見つけにくいのは確か。

個々のblogの内容も読んでみたが、いまいち面白くない。いま日本の政治家に、どのくらいメディアコンサルタントがついているのか知らないが、ほとんどいないか、いたとしてもろくな仕事をしていないなと思った。いや、一般的な有権者にアピールするのにはこのくらいぬるい方がいいのだろうか…。

*1 私の理解する限りではこんな感じ。違っていたらすみません

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本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを読む]
# 結城浩 (2004-06-16 (Wed) 08:06)

違っていません。大丈夫です(^_^)。

# yuco (2004-06-16 (Wed) 09:46)

どもー。会話って、あとから思い出すと自分のいいように解釈しているってことがなくもないので、すこしだけ不安だったのでした。ありがとうございます。

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